ブタ

指板のインレイ入れるのだけで10時間かかった。桜吹雪はもうええわ。


9歳くらいのときからよく親の金を盗んでた。10歳で初めて原チャリに乗った。地区の祭で獅子舞があり、地域の家々を周ったりもして、おっさんたちが獅子舞をしてる間、小学生たちはゴリラやパッソルを乗り回して遊んでた。もちろんノーヘル。
学校の近くの駄菓子屋でちょっとだけ万引きしたりもした。あるときお菓子を買うのに50円足りなかったので、おかんの財布から借りて、仕事から帰ったおかんにそのことを報告したらえらくほめられた。怒られたことはほとんど覚えてない。12歳になって、やっと悪いことをしてるということを理解した。それまでは何もわかってなかった。親に叱られても。気付くのが遅かったと思ってたけど早いほうだったのかもしれん。
のっちゃんと一緒に、カエルの口にエアーガン撃ちこんで、ハサミで腹開いて確かめたり、ただひたすらセミ撃ち落として遊んでた。
11歳のときに友達とふざけてて学校の前で車に跳ねられた。母方の祖父母が買ってくれたランドセルがぺしゃんこになった代わりにおれはほとんど無傷だった。

夏休みの宿題を最後までやり遂げたことがない。ほとんど毎年夏休みに呼び出されて学校で宿題をしてた。
公文に行ってて算数は得意だった。読書感想文はいままで書いたことがない。作文は26年間で2回書いた。高校入試と小学校の卒業文集。
どうでもいいようなことが気になって書けなかった。例えば、「ちゃんと」って何やろう?って思うともうダメ。それは本当に正しい日本語なのかと頭の中がぐるぐるして先に進めない。
卒業文集は、どうしても文章にならずうんうん唸ってたら、担任の辻先生が質問してきて、それに答えてたらちゃんと書けた。もうすぐおれはあの時の辻先生の年になる。
小学校を卒業してもまだ中学高校があるのかと憂鬱だった。