すきま

いつも通りの土曜日。掃除して本読んでギター弾いてのんびり過ごす。
夜はいつものキーマカレー。今までで1番おいしく出来たかもしれん。
にょろにょろ洗濯。白い冬用カーペット出す。大福は初めて。ちくわも覚えてないかも。雪の上を駆け回ってるみたいでかわいい。バランスボールに跳びかかったりカーペットの下に潜りこんだり楽しそう。


5年制の高校に進学する。入ってすぐなんか違うなと思いはじめた。クラスの誰とも仲良くならなかった。軽音部に入ってそこで知り合った人たちとよく遊んた。
夏休み前にピアスをあけた。ピアスしそうなタイプには見えなかったらしく、びっくりされた。同じクラスでもう一人ピアスをあけてた、見るからにヤンキーの子に声をかけられた。そのヤンキーの子はいつの間にか学校からいなくなってた。
許可を取ればバイトも出来たし免許も取れた。自由な学校だったけどものすごく閉鎖的だった。だんだん息苦しさのようなものを感じ出して、冬頃にはもうやめたくなってた。
問題を解くために、ある公式を覚えろという。その公式がどうやって導かれたかはとりあえず知らなくていいと。確かに今は知る必要がないし、たぶん知ろうと思っても理解出来ないものなんだろうとは思う。そんなことより今必要としている答えを出すことが大事で。でも出所のあやしいまとまった金をもらったような気持ちの悪さを感じてしまう。大事なような、どうでもいいようなことがどうしても気になってすっきりしない。その間に周りはどんどん答えを出して先に進んでしまう。気がつくと皆は前の方にいた。
学校は好きになれず勉強もやる気になれない。だんだんサボるようになった。それでも注意してくる先生はほとんどいなかった。
昼からサボって図書館へ本を借りに行ったら、昼休みに涼みに来てた父親とばったり会ったことがある。そういうことには口を出さない人だった。
2年目の冬にどうしても我慢できなくなった。そのときも昼からサボって家に帰ったら、おとんは昼御飯を食べに帰ってて、学校をやめたいと言うと、せめて3年間は行ってくれと言われた。おまえは冬季鬱病じゃないか、とも。
おとんは高校1年の冬に、突然家出をした。自分でも理由は分からんらしい。四国を出てあてもなく大阪へ行き、住み込みの仕事を見つけ半年近く行方不明になった。身元不明の家出少年を雇うようなところが当時はまだ有り、朝早くから夜遅くまで働くだけの生活。休みの日は金もなく知り合いもいないのでただひたすら梅田の地下街を歩き続ける。寂しいけれどいまさら帰りづらい。自分はこのまま死ぬまで何の喜びもない生活を続けていくんだろうか。寂しくて出した友達への葉書で居場所が分かり、警察に保護され、大阪にいた親戚が迎えに来ておとんの家出は終了。この大阪のおじさん、おばさんはその後おれもお世話になることに。この半年間の両親の心労は想像しただけで倒れそう。
そんな話を初めて聞かされショックを受けたおれは、とりあえずあと1年がんばってみることにした。
おとんのその後は、すでに除籍処分になってたところを、校長先生のはからいでもう一度1年から通うのであれば再入学させてもらえることになり、今度はちゃんと卒業して東京の大学へ進み地元の農協へ就職し、双子の誕生をきっかけに保険会社に転職。今も働いている。